【NCTの“個”を聴く #3】翻弄される色気、解き放たれた表現力 —— TEN「Birthday」

音楽レビュー

テンの魅力は、妖艶さと芯の強さが共存しているところにあると思います。
NCTでのデビューを皮切りに、WayV、SuperM、そしてソロと、幅広く活躍してきた彼。
そんな多彩なキャリアの中でも、「Birthday」は
テンというアーティストの本質がとてもよく表現された一曲だと感じました。

TENが魅せる、愛に溺れる瞬間

MVの冒頭、ひとりで佇むテンの存在感にまず圧倒されます。
けれど歌詞を辿っていくと、実は“君”という存在に翻弄され、
抗えないほど心を奪われていることがわかります。
「そのままで美しく完璧な君に、今日という特別な日を捧げる」
——まるで誕生日のように。

ダンスでもその関係性が表現されているように感じます。
多くの女性ダンサーとの絡みは、単なる演出以上に、
彼が何かに縛られ、支配されているような感覚を強く印象づけます。
女性を翻弄するのではなく、自らが翻弄されているその構図こそが、
テンの中性的な魅力をより浮き彫りにしているように感じます。

本人もこの曲について
「後悔しながらも愛を捧げたい。それでもダメだとわかっているDeep loveな世界観」
と語っておりこの揺れ動く感情は、彼の妖艶さと繊細さ、
そして芯のある表現力によって説得力を持って伝わってきます。

しなやかさが色気に変わるダンス

テンのダンスには、どこかしら女性的なしなやかさがあるけれど、
それが“女性のよう”というわけではなく、
あくまで男性としての色気に昇華されているのが魅力。
女性ダンサーと並んでも対比にならず、
自然に調和しているところに彼ならではの身体表現の美しさを感じます。

関節の柔らかさや、自由自在な身体のコントロール力、
長い手足を使ったしなやかな動きが、彼の持つ妖艶な雰囲気をより際立たせています。

梅雨のように残る、テンの声

そして声。テンの歌声は、まるで梅雨の空気のようだと思いました。
熱気と冷たさが同時に存在していて、
耳に届いた瞬間はすっと流れていくのに、
後からじわじわと心に残るような、不思議な余韻を持っている。

雨のシーンが印象的な映画やドラマに漂う、大人の色気や切なさ。
それを彷彿とさせるようなテンの声には、
季節の温度すら感じさせる奥行きがあると感じました。

「NCTの“個”を聴く」第3回は、テンの「Birthday」についてお届けしました。
妖艶で色気のあるパフォーマンスが魅力のテン。
彼のアーティスティックな表現力の奥深さが、少しでも伝わっていれば嬉しいです。

今回は彼の“妖艶さ”にフォーカスしましたが、
テンの魅力はそれだけではありません。
普段は猫のように人懐っこく、愛らしい一面の持ち主でありながら、
完璧なステージを作り上げるために努力を惜しまない、圧倒的な努力家でもあります。

パフォーマンス中とのギャップや、
ストイックに芸術を追い求める姿も、彼の魅力の一部。
そんなテンのいろんな一面にも、ぜひ注目してみてください。

次回は、先日2枚目のソロアルバムをリリースした
NCTの“感情奏者”ドヨンの魅力に迫っていきたいと思います!
どうぞお楽しみに。

▶「NCTの“個”を聴く」シリーズ一覧:
#1 MARK「1999」#2 JAEHYUN「Unconditional」#4 DOYOUNG「안녕, 우주 (Memory)」

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