「余白」が心を動かす──MARKの作詞に見る言葉と物語の力

音楽レビュー

以前「i hate fruits」の記事でも触れましたが、
マークが書く歌詞の魅力は、“余白”と独特なワードセンスにあると感じています。

たとえば、NCT DREAMの最新アルバムに収録された
「When I’m With You」の中にある
「1人も2人も好き、2人よりも君が好き」という歌詞。

メンバーたちが
「これは2人なの?3人なの?」と話していた様子が微笑ましかったのですが、
こうした“一瞬で意味を捉えきれない”ような言葉の使い方は、
マークの歌詞によく見られる特徴です。

もちろん、彼の中には明確な意図や意味があるのだと思います。
ですが、それを聴く人がどう受け取るかは自由で、
その「解釈の余白」こそが、彼の歌詞の面白さにつながっていると感じています。

今回は、そんなマークの作詞スタイルに注目し、
彼が手がけた楽曲の中から3曲を取り上げて、
その魅力を歌詞の面から紐解いていきたいと思います。

Time machine──「恋に落ちて、別れる運命」

この曲には、明確なストーリーがあります。
まるで一本の映画を観ているような構成で、
キーワードを挙げるなら「運命」ではないでしょうか。

たとえば、

君の瞳を見て宇宙に連れていきたい」
「宇宙船でデートしよう

といったフレーズからは、
恋に落ちたばかりの2人の甘い雰囲気が漂っています。

しかしこの曲は、単なるラブソングではありません。
それはサビの対比からも明らかです。

なぜなら僕たちはまた恋に落ちるから
Cause we’d still fall in love again

なぜなら僕たちはまた別れてしまうから
Cause we’d still fall apart again

“恋に落ちる”という甘さと、
“別れてしまう”という現実が並ぶこの対比は、
とても切なく感じます。

どれだけ過去に戻っても、2人は恋に落ちて、
そしてまた別れてしまう。
そんな、変えられない運命が描かれているように思いました。

特に印象に残ったのが、ラストの歌詞です。

「僕たちはお互い終わりを知っている」
「僕たちはいつもそんな運命

終わりがわかっていても、運命が変えられなくても、
それでもきっと、愛することをやめられない。
そんな想いがこの曲には込められているように感じました。

Rains in Heaven──「君の涙にそっと寄り添う」

この曲を最初に聴いたとき、私はヒーリングソングのように感じました。

穏やかなメロディだけでも癒されるのですが、
歌詞の意味を知ってからは、より深く心に響いてきました。

少し心が疲れてしまったとき、
自然と聴きたくなるような曲だと思います。

中でも、私が特に惹かれたのはこの一節です。

君が泣いたら、天国も泣いてるんだって
I heard when you cry, it rains in heaven

雨と涙を重ねるこの表現には、
マークらしい繊細な感性を感じました。

「君が泣くと、天国=世界そのものも悲しんでいる」ような優しい視点。
ただ寄り添うだけでなく、
「あなたの悲しみはちゃんと届いている」
と語りかけてくれている気がします。

もう一つ、心に残ったのがこの言葉です。

僕たちはみんな同じだけど 痛みは違う
We are all the same but hurt different

マークの優しさが滲み出ている言葉だと思いました。

「自分だけがズレているのでは」と悩んだり、
「自分ばかり傷ついている」と感じてしまう瞬間に、
そっと寄り添ってくれるような歌詞です。

マークはいつも、
誰かを“置いていかない”言葉を紡いでくれている気がします。

Child──「大人と子どもの間で揺れる自分」

「Child」は、マーク自身の内面の葛藤を描いた曲だと思います。

まず印象に残るのは、
「子どもと大人のあいだ」にいる自分の姿です。

完全に子どもだった頃から、思春期を経て大人になる過程で、
年齢的にはもう“大人”でも、まだ“子どもの感覚”を持っていることがありますよね。

その狭間で、自分とは何者なのかを問い続ける姿が、
この曲から伝わってきました。

そして、この曲にはもう一つ、
「主観と客観」の葛藤もあります。

人が見る僕は誰なんだろう
사람들이 바라본 난 누구야

マークは、自分を客観的に見る力がある人だと思います。

自分自身と向き合い、さまざまな角度から物事を捉えるからこそ、
“人から見た自分”という存在にも敏感で、
その評価を大切にしているのではないでしょうか。

誰か共感してくれるかな
혹시 누군간 공감할까
今だけはわかってくれないかな
지금만큼은 알아주면 안될까

他人の視点が大事だとわかっていても、
やっぱり「自分の気持ちに共感してほしい」と思うこともあります。

その切実な感情が、この曲には描かれていると感じました。

マークの言葉が心に残る理由

マークがNCTのコンテンツで
「自分の好きなラッパーがどうやって歌詞を書くのかを想像して書く」
とも話していて、
その豊かな想像力にも驚かされました。

マークの歌詞には、自分自身をまっすぐ描いたものもあれば、
物語を先に組み立ててから言葉を綴るような曲もあると感じます。

伝えたいメッセージを直接書くのではなく、
登場人物が何を思い、何を話し、どんなふうに進んでいくのか――。

その感情の流れに寄り添いながら、
マーク自身の思いもそっと重ねているように思います。

だからこそ、私たちが聴いたときに
「これは私のことかもしれない」と感じられるような、
共感を呼ぶ歌詞が多いのではないでしょうか。

▼こんな記事もおすすめ

NCT DREAM『INTRO : DREAMSCAPE』

MARK「1999」

コメント

タイトルとURLをコピーしました